第3回「同時通訳者兼格闘家/横山カズさん」 カテゴリ: インタビュー


power1

 

君には英語の適性がない、と言われ続けた。

 

:高校、大学への進学に際して英語力、また学校の成績というのはどうだったのでしょうか?

 

:相変わらず悪いままでした。

 ただ高3の夏休み前、友人に英語の参考書を3冊薦められ、

 これを覚えれば外大に入れると言われたんです。

 

 そこから必死で丸暗記をしました。いわゆるパターン暗記ですね。

 それにより英語の成績は偏差値33から66くらいまで上がったんです。

 

 パターン暗記なんですが、その中の英語が言葉として機能している様子が面白く、

 英語の楽しさに少しずつ気付いていきました。

 

 ただ、リスニングは0点でした。

 先生にも「君には英語の適性がない」とまで言われました。

 それを言われるたび、心が傷つきました。

 

:今では想像できないですが、その時のカズさんは話す、

 であったり聞くという力はほぼなかったと。

 

:ええ、ほぼゼロです。全くなかったです。

 

:話す聞く、という力の大事さに当時のカズさん自身は

 気付いてなかったのでしょうか?

 

:そうですね、大学に入るまではほぼできなかったです。

 気付いてなかったというより無理だと思っていました。

 だからこそ外大に行けばなんとかなるんじゃないかと思っていました。

 

 藁にもすがる思いでした。

 

 ただ外大に合格するんですが、

 英語学科には落ちてしまい、スペイン語学科

 に入る事になるんです…(笑)

 

:そうですよね、プロフィールには確かにそう書かれています。

 ただついに念願の外大に入れたわけですが、

 そこからどうなっていくのでしょうか?

 

:入ったはいいものの英語の授業がほとんどなく、

 いやいやスペイン語の授業を受けていました。

 

 それを紛らわすように柔道部に入り、

 生活のためにアルバイトでクラブのバウンサー(セキュリティ担当の用心棒)

 を薦められてやったりしてました。

 

 そこで、飛び交っていたのが英語だったんです。

 そこで、やはりもう一度英語をしっかりやろうと火がついたんです。

 松本先生の本にもご自身も柔道をされていた事が書かれていて、

 じゃあ僕も柔道を続けようと決めました。

 

:松本道弘氏の影響を受けた方には武道や格闘技の心得がある人が多いですが、

 まさにカズさんがそういう感じですね。

 大学を出て通訳になるまでというのはどういう経緯なのでしょうか?

 

:大学の終わりにはあの時の英語に夢を持っていた少年に戻っていました。

 留学生が残していった英字新聞やTIMEを片っ端から読みました。

 

 知識は増え、読む力もどんどんついていきました。が発音が下手すぎて

 リスニングがまだ全くできなかったんです。

 

 その時に足りなかったもの、やるべきだったことが今僕が提唱している

  「パワー音読」に全て詰まっているんです。

 

:発音が下手すぎてリスニングがその時も苦手だったというのは大変興味深い話ですね。

 通訳の方というのはリスニング能力とそれを言語をまたいで変換する力の最高峰だと思います。

 どうして当時はできなかったんでしょうか?

 

:日本語に頭が凝り固まってしまい、

 新しい音を自然に取り入れる力がなかったんだと思います。

 通訳になった最初の頃は英語を聞くのが怖かったんです。

 

 知識に頼った英語理解をしていたんだと思います。

 音や感覚で捉える、という力が足りなかった。

 

 テレビの画面がぼんやりと乱れていても、タイトルなどから誰が出ているか、

 という推測はできますよね。

 

 これが知識レベルでの英語理解です。

 

 だから、そのときから耳に頼るリスニング能力を伸ばそうと頑張りました。

 当時は通訳中に知らない事を言われたらおしまいだという恐怖と戦っていました。

 

:もしそういう場面に出会ったらどうしていたのでしょうか?

 逐次通訳だと聞き返すなどはある程度許されるのでしょうか?

 

:当時はエンジニア系の逐次通訳をしていました。

 コミュニケーションが密な現場だったのでそれはOKでした。

 それでもやはり、英語の発音については依然課題でした。

 

:発音についてはどういうアプローチをしましたか?

 

:僕は今の自分の生徒にも言うのですが、

 完璧な発音をいきなり目指すのではなく

 半分くらいの発音をまずは目指そうと、

 いきなりK-1ファイターを目指す必要はないと言っています。

 

 まずは自分ができる範囲で向上を目指そうと。

 僕自身がとても苦手だったので、気持ちがすごくわかるんです。

 

:具体的にはどのような方法をとりましたか?

 

僕が明確に意識したのは単語の第一アクセントに注意する事でした。

 日本人はアクセントに少し曖昧な理解をしてしまいます。

 例えば日本でいう県という意味

 (ちなみにフランスでも使われます)のprefectureですが、

 アクセントはプリ「フェ」クチャーではなくプ「リ」フェクチャーです。

 

 このアクセント、抑揚などに凄く意識を向けました。

 今でも抑揚が強すぎるとたまに言われるんですが、

 その時の激烈な訓練の名残です。

 

:それは英語の波というか流れというか、

 そういうフローを体感的に、直感的に捉える訓練だったわけですね。

 

:まさに、そういうことです。それにより聞き取りがものすごく楽になりました。

 クラブで酔っぱらった客相手をしていたバウンサー時代も

 ろれつが回らない人の英語でも

 楽に聞き取れるようになりました。

 

 泥酔、激高している人は語彙レベルが極端に下がり、

 アクセント、イントネーションが

 強まるんです。これも「パワー音読」のエッセンスになっています。

 人が何も考えずに話す、ということは語彙レベルを下げ、

 イントネーション、アクセントを守り話す、という

 ことなんです。

 

 これは僕の「パワー音読」で存分に活きています。

 英語初期段階で日本人に足りないものがすべて入っています。

 国際交流だけでは終わらない「有事の際になめられない英語」

 をやはり最終的には手に入れて欲しいという思いがあります。

 

 NEXT>パワー音読とは?