第5回「翻訳家・多言語習得者/亀井雄三さん」 カテゴリ: インタビュー


 

 

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まずもって発音が大事。

 


:話を少し習得の部分にフォーカスさせていただきますと、英語が好きで習得を試みる方というのは
  それこそ数えきれないくらいいるわけで、その中で様々な習得レベルがあります。
  亀井さんがそのレベルに辿り着くまでに、気をつけてきた事はなんですか?

まずは、発音を鍛える事ですね。

  ラジオ講座を聴きながら毎日欠かさずやっていました。

:やはり先ず発音ですか。

:ええ、あとは文通友達を作り、複数のペンパルと交流をしていました。
  学校で習って、すぐ使うという臨場感を中学の頃から味わっていました。



:当時、ペンパルはそんなに簡単に見つかるものだったんでしょうか?

:当時は英会話雑誌というのがいくつもあって、そこに文通希望者の住所が載っていたんです。


  今では考えられないですが(笑)そこに直接送って、文通が始まる、という感じでしたよ。
  当時進んだ意識で英語をやっている人たちはそういう雑誌に集まっていたように思います。


  学校では得られない刺激をそこで得ていたという感じです。



:それ以外で好んでやっていた勉強法などはありますか?


:イソップ物語とか白雪姫というような簡単に書かれた英語の物語を買って集めて読んでいました。
  それを発音練習したりしながら楽しんでいました。
  学校の教科書では物足りないという感じでした。

  英語をやりたいという気持ちがそうさせたんだと思います。


:その当時から亀井さんが何か習得の目標にしていた事などは覚えていますか?

:漠然と英語の専門家になってみたい、通訳になってみたい、という思いがありました。
  特に具体的な誰か、というような目標はいませんでしたね。


  英語を職業にしてみたいとは思っていました。


:亀井さん自身はよく、特別語学の才能に溢れているいわゆる天才なんじゃないか?

  というような事は言われたりしませんか?

:ええ、まあ…そうですね…。

  日本人ではなくよく外国人から言われたりしますね。
  オーストリア政府の奨学生試験を受けた時に相手の面接官に

 「言語の天才」だと言われたことがあります。


  ブルガリアにブルガリア語講習を受けに行った時に、

  先生にあなたの才能は神が与えたものだという手紙を帰国後もらったりしました。



:まあ、想像に難くない出来事ですね。

  ただ、僕の今回のインタビューの目的は
  天才を天才で終わらせない、ということなんです(笑)


  やっぱりあの人は天才だから、で終わっては誰も参考にならないですから。
  亀井さんがこれまでに語学にかけて来た情熱や努力を「天才だから」で終わらせてはいけないと思うんです。


  必ず、他の学習者にとってヒントになる要素はあるはずだと僕は思っています。
  そういう意味では、まずメンタルの部分についてお聞きしたいです。 

:そうですね、モチベーションとかということになるでしょうか?
   
:ええ、モチベーションの保ち方、

  または習得に際しどの言語にも共通するような習得のコツなどは見つかりましたか?


:どの言語でも個人的には意味がわからない時点でも発音する事が楽しい、という思いは持っていました。


  英語なんかでも、中学のときは一つ上の学年の教科書なんかも読んでいました。
  ドイツ語でもフランス語でもわからない文章でも、とにかく読んで楽しんでました。
  発音すること自体が面白かったんです。


:それは自分自身が日本語以外の言語を話しているということへの愉悦というか
  なにか知的好奇心のようなものでしょうか?

:ええ、そうでしょうね。どの言語習得にあたっても共通すること、で言うと
  何に使いたいのかをはっきりさせる事ですね。


  その言語を習得してどうするのか、ということです。
  勉強するだけでは何にもならないですからね、

  その先で何をしたいか、を常に持ち続けることは大事です。


  それがないと、外国語は手段になり得ない。


  多言語をやってきた過程でも私自身、それぞれの言語を学ぶ目的は違います。
  具体的な目標を持たない言語も中にはありましたが、最低でもその言語を習得して
  現地の人と交流したいという思いは持っていました。

  モチベーションの話をすると、

 

 よく「意思が弱い」という様な言い方をする人がいますが
 あれは真理ではないんですね。


  意思とは目標があって初めて作られるものです。
  つまり

  目標がない状態では意思などくじけてしまって当たり前なんです。


  だからしっかり目標を定めて、そこに人生の価値観を照らし合わせて
  どこまでやれるか、でしょうね。

:当然やはりそこは大事ですよね。

:ええ、それがないと大体中途半端に終わるんです。
  後は、他に共通する点はやはり「発音」でしょうね。

 
  レベルがあがればあがるほど、読む量が増えますよね。
  その読む作業が発音ができないと苦痛になってくるんですね。


  資料や本なども含め、読む対象を発音できないというのは非常につまらないものです。
  早足でささっと読むにしてもなんとなく口にしたりはしていますよね。


:サブボキャライズというやつですね。

:そのほうが意味は取りやすかったり、意味の区切り、

  つまり関係詞なんかの前でワンクッションを置く、   
  というようなリズムも掴みやすくなります。

:やはりそこを無視して習得はあり得ないということですね。

:特に難解な文章に当たると意味を取るのに発音してみたりすると意味が取りやすくなったりもします。



:習得の順序、ということではどうでしょうか?
  数えきれない数の言語の習得を経験してきた亀井さんにとって、
  新たな言語に取り組む際に、まずまっさきに取り組むことは何ですか?

:まずは文字が違うこともあるので、そういう時は当然まずは文字からですね。


  でも結局はその文字がどう読まれるか、という点においては

 

 「発音」だと言う事になると思います。


  その次は自分が知っている言語との共通点です。そこを少しずつ探っていくんです。


:なるほど、それは面白い。つまり効率化ですか?

:まさにおっしゃる通りです。共通する部分はすぐに理解できますし習得も早いんです。
  
:逆に言うと、それは相違点を見つけるという作業にもなりますか?

:はい、そういう事です。英語なんかで言うと、日本語との違いはとても大きいのですが
  カタカナで使われている言葉もあるわけで、「コミュニケーション」とか。
  そういうのはどんどん積極的に使っていきます。

 

  英語の意味のまま使われているものはそのまま使えばいい。

 

  ただ、当然カタカナでの意味に引きずられすぎないように気をつけないといけません。
  たとえば ”speech” は、日本語でいうと大勢の人の前で話す事に限定されますが、

  英語ではあれは「発話」全般です。


  その広い意味でしっかり英語で使えるようにするわけです。
  ですので、文法事項なども含め似ている点、共通する点はどんどん効率的に理解に繋げ、習得してしまうんです。


  殆どの場合、文法書を1からやる必要は全くないんです。
  インデックスを使って知っている所なんかは飛ばせばいいんです。



:ちなみに亀井さんはそういう習得の過程でも複数の言語を同時に勉強したりするんでしょうか?

;いえ、学習言語という意味では一つしかやりません。
  もちろん色んな国の知り合いからメールや連絡がきてその都度使う機会があり、日常的に使う事はありますが、
  しっかり勉強をする学習言語という意味においては基本的には一つだけなんです。


  似ていれば同時期にやったりもしますが、特にはじめの時期などは混乱してしまうので。

 


:多言語習得ということに於いて最も難しいのは習得過程ではなく、「維持」することにあると思うのですが
  亀井さんご自身はどのように維持の工夫をされていますか?

:維持、に関してはネットがなかった時期が一番大変でしたね。
  現地から雑誌を取り寄せたり定期購読をするなどしていました。


  非常に高かったですが大枚はたいてやってましたね、当時は。

:その雑誌をどのくらいの頻度で読む事が維持に繋がるのでしょうか?


:具体的な頻度までは正確には覚えていませんが、読みたいなと思った時にすぐに手にできる環境
  はとても重要だと思います。

  

  気持ちの面でも、いつでも読める環境にある、というのは大きな差を生みます。
  今なんかネットがあるのでいくらでも読めますよね。


:亀井さんにとってインターネットというのは非常に大きかったんではないでしょうか?

:大きかったですが、プロレベルまで習得した6言語はネットの時代が来る前にやっていたので
  あまり習得に関して言うと恩恵はさほど受けてないんですよね…

:ただその維持には非常に大きいのではないでしょうか?

:それはそうですね。なんでも手に入りますからね。相当大きいです。

:具体的にはどのようにネットというツールを使われていますか?

:例えば、

 

  調べ物があるときはその言語で調べる、友達を作りその言語で交流をする

 

  、とかですかね。
  


:そういった事がなんでも自由にできる時代ですからね。   
  色々な工夫をされてきたネットのない時代からすると、やはり楽だな、という感じですか?

:それは当然そうですね。当時の自分に見せたら大喜びするでしょうね(笑)

:亀井さんがこのネット時代に生まれていたらすごい事になっていたかもしれませんね。

:うーん、まあただネットには問題点も多くありますよね。
  果たしてそこに中高生の自分が適応できたか、はあんまり自信がないですが…


  逆に嫌になってしまうこともあったかもしれません。
  ただ、外国語習得という観点から言うとこんなに素晴らしいものはないと思います。



:世界中のラジオ局が聞けるアプリなんかもありますよね、そういうのも使ったりしますか?

:ええ、使います。今は一つでは物足りなくてもう同時に10個くらい流したいくらいです(笑)

:聖徳太子みたいにですか(笑)

:ええ、面倒なんで同時に流したいんです。

 


:どんどん変わる時代に順応しながら亀井さんは語学に向き合っているんですね。
  なにか今注目しているツールなどはありますか?

:そうですねえ…、SNSなども一段落して、ウェブラジオなども出尽くして
  今は特にはないかもしれないですね…。
  でもやはり生身の人間ともっと会って話したいですね。
  生身の人間同士が国境を超えてパッと出会えるようになるといいですね。

:どこでもドアじゃないですか(笑)

:そうそう、そんな感じ(笑)
  
:ラジオ、という話をすると何言語も習得されてきて、今はどの国のラジオを聞いてもほぼわかるんでしょうか?

ラジオというツールは早口ですし、

 難しい言葉も使うので聞き取りは非常に難しいです。


  今で言うとスペイン語なんかはたまに聞き取れなかったりするかもしれません。
  やはり聞き取りの量に理解度が比例してきますので。
  スペイン語は少しサボっていたので…。

 

  ポルトガル語なんかはスペイン語での類推で翻訳くらいはできますね。



:リスニングの量と言ってもただ聞けばいいというわけではないですよね?
  リスニングの理解度を高める為に気をつけていた事などはありますか?

:はい、単語の意味や構文なんかは読む事で身に付けないといけません。
  自分で書いてみたりすることも大事です。
  相当高いレベルで、読み書き話す、ができないと聞き取りはできませんので。

:そうですよね、その言語の総合理解としてリスニングはある、ということですね。

:ええ、その通りです。
  日本人が日本語のラジオを聞いて普通にほとんどわかるのは相当日本語のレベルが高いからですよね。

 

 

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