第5回「翻訳家・多言語習得者/亀井雄三さん」 カテゴリ: インタビュー


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世界の大きさを感じてほしい、人の考えの大きさ、そして深さを感じてほしい。

:亀井さんが多言語にこれまで深く取り組んでこられた中で、一番やってて良かったと
思うときはどういう時でしょうか?

人と深い話ができる時、ですかね。
自分の外国語力を認めてもらえたときなんかも単純に嬉しいですしね。
 
:今日お話を伺っていて、亀井さんは人と人との繋がりをとても重視しているように思います。
言葉の先に常に人がいる、そんな印象を受けます。

:ええ、そうですね。外国語を話すと自分の中身が入れ替わるような感覚を
中学生の時から持っています。
その感覚が非常に楽しくて。


  やはり言語を学ぶ根底には楽しさがないと続きません。


人と比べてどうだ、というような優越感なんかは気持ちの足しにはならないと思います。


自分のなかでしっかり意思や問題意識をもって突き進んで行く、それでいいんじゃないかと思います。

 競争したり、比べたりしなくても友達を作ってコミュニケーションができて、それでまずはいいんじゃないでしょうか。


 
:やはり言語はツール、という部分に収斂されるのでしょうか。

:その通りです。


:誰かと比べたり、誰かを批判したり、日本人が持つ特有の気質のようなものが語学の習得を
邪魔していると言うような事は多かれ少なかれありますよね。

:ええ、話してるそばから指摘したりする人がいますね。
あんなの絶対ダメですよ。
他の国の人は絶対にそんなことしませんよ。


そういう人は日本人同士の狭苦しい競争に溺れているような気がしますね。
泥沼に足を取られている状態です。
そういう人はどんどん退化していきます。
 そういう所から解き放たれてもっと大きな世界へ羽ばたかないといけない。
 
ロシア人の中でドイツ語を話したり、トルコ人の輪で英語で話したり、

 色んなシチュエーションが出てきます。


そういう中で思うのは、言葉を話すということは他人の顔色を伺ったりしながらするようなことじゃない。
そういう世界が本物なんだと思います。

:認め合える世界、ですよね。その認め合った点を軸に人は繋がっていくものだと思います。
決して間違いを指摘したり、誤りにフォーカスするようなことはあってはならない。

:ええ、コミュニケーションですから、通じあえればいいわけです、まずは。
ですから、そういう部分は日本人が変えて行くべきところなんだと思いますね。



:では最後に、多言語習得を通じて亀井さんが見つけた真理、みたいなものはありますか?

:だいたいどこの国の人もおんなじようなことを考えているということでしょうか?
文化背景などが違っても、だいたい人間として考えることなんかは同じなんです。
人生や恋愛のことなど。


あとはそれぞれの母語で話すと、まったく違うということでしょうか?


たとえば最初は自己紹介などを英語でやるわけですね、でもそこからこちらが
その人がフランス人だとわかってフランス語で話しかけたりすると、その人は
途端に饒舌になるわけです。

 その違いは本当に面白いんですよ。

 
英語を話していた人が母国語に変わる、その瞬間は非常に面白いんです。
そのレベルまで行ければ語学は本当に楽しくなりますよ。


母国語になると人はなんでもどんどん話すようになる、それも共通して言えることですね。

:僕はコミュニケーションの究極は「違いを知って違わない事を知る事」だと常日頃思っています。

:確かにね、そういう感じです。

 人によって細かな違いはあるにせよ、
こういうことを考える、というようなところはだいたい同じなんですよね。
やっぱり僕らと同じなんだな、と思える瞬間は多々あります。


欧米の人が特別何か変わった事を考えている、というようなことは基本的にはないですからね。
 
ですので、現地の人と実際に交流してみる、というのがとても大事なんですね。


 僕自身、くじけそうになったとき、

 これまで出会ってきた沢山の人に何度も救われ励まされてきました。 


社会人の人でも是非時間を作るなどして、その言語の現地に行ってみるのがいいと思いますよ。
ネットではわからない世界も沢山ありますからね。
 
 
:英語学習を頑張る沢山の方がこの記事を読まれていると思います。
そういった方達になにかアドバイスをいただけますか?

:そうですね、勉強の為の勉強ではダメだ、ということでしょうか。


素振りが目的の野球選手などいませんよね。
ですので、英語で何かこれをしたい、という事をまずは持つ事だと思います。

そのために多くの人の経験は参考になると思います。


そしてネットで氾濫する情報の波に飲まれないようにしてほしいですね。
自分しかできないこと、自分でしかわからないことが必ずあります。
勉強の過程も含めて自分で作っていくものです。


周り、特に日本人を見ないようにするといいと思います。
 
外国人と沢山話せばいいんです。


周りの日本人に対する優越感など持たなくてもいい。
  世界の大きさを感じてほしいです。
人の考えの大きさ、そして深さを感じてほしいです。


私自身、これまで多くの外国人に出会ってきました。
そして外国語を通してしか得られない発見をし、感動してきました。

目標をもって、自分の力で進んでいってほしいと思います。

:亀井さんの目から見た世界はとてもカラフルで僕らには見えないものも
もしかしたら見えているのかもしれません。


僕も1人の英語学習者として、その景色をこの目で確かめるまでは絶対にあきらめません。

 そして英語を頑張るみなさんにもそれを感じてほしいと思います。


本日は大変貴重なお話をありがとうございました。


:こちらこそ、ありがとうございました。




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亀井雄三/翻訳家

東大教養学部卒。東大博士課程単位取得満期退学。
専攻学科はドイツ語・ドイツ地域文化研究。

専門テーマは音楽社会学,音楽都市論,ウィーン都市史,オーストリア近代史。
翻訳言語は英,独,仏,伊,西,葡。訳書に『ドイツオペラの知識』。習得言語は数十。

1996〜2001年,オーストリア,スペイン,チェコへ各政府国費奨学生として留学。
(外国政府国費留学は1言語の能力で1ヶ国が通常で,

単一言語や同系統言語でもなく別系統の複数の言語は非常に稀なケース。)

師匠には海老澤敏(モーツァルト学),平川祐弘(仏語・伊語)。
戦後日本の外国研究の英知から受け継いだ外国語力で21世紀の人類のために飛躍すべく色々な計画を企画中。