第4回「英語講師兼通訳者/鷹森桃太郎さん」
カテゴリ: インタビュー
フラッシュスピーキングとはなにか。
セ:僕もまだある種、英語学習スタートしたばかりなので、とてもよくわかるのですが、
with a hitchというかつっかえつっかえになる感じをどう克服するか、自分なりに模索してやってきました。
その中で気付いた事が英会話の「肌触り」です。
桃:おお、いい表現ですね。
セ:英語での会話はこんなにも簡単な言葉を使い回す場なのか、と気付けたんです。
例えば日常会話の中では「不正」という事をinjusticeとか
言わずにbad thingとかwrong thingと言いますよね。
桃:本当にそうですよ。
That’s really bad. とか(笑)
セ:日本人でも深く友達になれば心を許し合い、自分の馬鹿な所を見せれる。
英語での会話はそのハードルが低い(少なくとも表面上は)ものとして会話が進んでいきます。
桃:そうなんですねよ、僕も学会で本当に親しくしている先生に
「モモ、僕たちはもう充分に仲がいんだからドクターじゃなくて名前で
呼んでくれてもいいんじゃないかい?」なんて言われたりします(笑)
セ:敬意を表すというのが、日本と海外では違います。
親しみを込めて呼ぶ事が信頼の表れであり、それが最大の敬意だと英語の世界では捉えられますね。
桃:こちらは尊敬してるので「ドクター」と呼びたくなっちゃうんですよね。
セ:確かに(笑)
桃太郎さんは幼い頃から自分は将来英語を使った職に就くのかなあ
というぼんやりしたイメージのようなものはあったのでしょうか?
桃:いえ、なかったです。寧ろ英語を使った仕事には就きたくなかった。
というか教師になりたくなかったんです。
大企業の社員と教師にだけはなるまいと思っていました。
結局、今教師になったんですが…
どうして教師になりたくなかったかというと
なんでこういう教え方をするんだろう、という怒りがあったからです。
自分なら必要な英語の最小単位をもっと効率の良い教え方で伝えれるのにと思っていました。
それが大きかったように思います。
セ:その効率のよい教え方、というところで言うと桃太郎さんの持っている通訳メソッドの発展版で
「フラッシュスピーキング」というメソッドがあります。
少しご説明いただけますか?非常に興味があります。
桃:はい。まずフラッシュスピーキングには仕込みがいります。
お気に入りの文章やフレーズを取り入れておく必要があります。
そこから使いたいフレーズや使えそうなものをピックアップしておきます。
仕込みには上田さんの上田式シャドーイングやカズさんのパワー音読などが
やはり最適でしょうね。
フラッシュスピーキングというのはガチガチに論理的に固めて話す練習、ではなく
「ある程度」まとまった型にはめて自分の中にあるフレーズを効率よくアウトプットする
メソッドなんです。
セ:英語には明確な型がありますね。その型や、その型に則って話すというのが苦手な日本人には
とても救いになるような気がします。
桃:型にはめられるようになって初めてプレゼンやディベートができるんです。
簡単に言うと、フラッシュスピーキングとは
自分の中に取り込んだ英文を使って即興プレゼンをするメソッドです。
フラッシュ FLASHは
Focus
メインメッセージをひとつに絞る。あれこれ言おうとすると混乱します。
List
使用する単語、キーワードを列挙する。
Assort
リストアップしたものをまとめる。ポイントを三つにして各項目をグルーピング。
Structure
話の構成を考える。型にはまることが大事。
Highlight
重要な点を明確にする行程です。メモをフラッシュした時に見やすくするためです。
実際に行う時の行程としては、まずメモを用意します。
そして型を参考にまずは言いたい事をまとめます。
その時に絵や記号を駆使してメモを取るんです。
これは通訳が記憶の保持のためにやっているメソッドを応用したものです。
文字で書く時間を大幅に短縮するメリットと、イメージから文章を再構築する瞬間的な能力を
養う事ができます。とてもスピーキングには効くんです。
人が何かいいたいときに文字を頭に浮かべて考える人はあまりいないと思います。
イメージやぼんやりした絵があって、それを言葉にしているはずです。
それを型にはめどんどんやってみるという一種の練習法なんです。
セ:型、というのは自分でなかなか見つけたり参考にしたり、というのは
少し学習者にはハードルが高いかもしれません。
なにか良い型の見つけ方などはありますか?
桃:TEDなどのプレゼン、スピーチを何本も見ていると一定の法則があって
ルールがある、そこに則って話しているんだな、というのに気付くと思います。
そうは言ってもやはりそれをゼロからやるのは手間ですし、そもそも
型というくらいだから既存のものが存在します。
プレゼンテーションについては古代ギリシャでひとつの型が確立しました。
それは序論、本論、結論という今ではおなじみになった型です。
TEDのプレゼンを見てもこのような流れに沿ったものがほとんどですよね。
この古来よりあるものを含め、他にも役立つ型が存在します。
これらについてはまた違う形でお話したいと思います
セ:そうですね、カズさんや上田さんのように動画を作っていただけると
大変わかりやすいと思います。
桃:是非、やってみます。
で、フラッシュスピーキングのポイントとしては、
1. 準備時間とプレゼンの短さ。パッと準備しパッと発表する。
2. 閃きを活かす。荒唐無稽でもいい。話すことを目的とする。
3. メモはパッと見る。この技術はプレゼン技術ではフラッシュと呼びます。
文章は短くていいんです。
型は典型的な例で言うとこういうかたちです。
イントロ→提案→立証→結論
プレゼンでもスピーチでもディベートでも、基本の順番は英語では変わりません。
こういったすでにある型にはめ、瞬間的にメモを参考にアウトプットする、というのが
フラッシュスピーキングの概要です。
やはり言葉では伝わりにくいので、わかりやすいものがあったほうがいいかも知れませんね…
セ:これは、なかなか英語のフィーリングを捉え、かつスピーキングに直結させるトレーニングとして良さそうです。
是非、動画を楽しみにしています。
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