ミュージシャンが5年のカナダ在住で英語を身につけた方法とは?アーティスト【名取伸悟】インタビュー カテゴリ: インタビュー


 

最初は発音にフォーカス、向上すると驚きの発見があった

セレン:さて、英語に関する質問をここからさせていただきたいんですが、

かなり準備なしの状態でカナダに飛び込んで、最初とても大変だった状況はわかったんですが、

そこから具体的に英語の勉強って何をどうやったんですか?

 

名取:ほんとに色々やりましたね。

その中の一つがセレンさんのTwitterをマメに見るっていうのだったり(笑)

勉強法やフレーズなんかはとても参考にさせてもらってました。

 

Duo3.0や文法の本は何冊か持っていっていたので、まずはそれをやったり

オンラインでランゲージエクスチェンジもやってましたね。

現地にも色々コミュニティーがあったので英語を学びたい人が集まるところに飛び込んだり。

 

ただ僕は語学学校には行かなかったんです。

カナダに留学に来る人って語学学校を決めてから現地に来ることが多いんですよね。

でも僕は逆にそれを知らなかったので後で決めようくらいに思ってたんです。

 

でも色々調べてるうちに意外と値段も高いしどうしよう…なんて思ってるうちに

まずは自分でできるところまでやってみようと思ったんです。

 

だから完全に英語に関しては独学なんです。

 

セレン:自分一人で始めて継続し、実際に力をつけていくのって大変だと思うんです。

まずはどのあたりにフォーカスをしましたか?

 

名取:最初の半年くらいはやみくもにやっていたように思います。

会話として成立する英語力をつけるためには大量のインプットが必要だった

と思うんです。でも僕の場合は結構最初の方発音にフォーカスしてて。

 

セレン:さすがその辺はミュージシャンですね。

歌うことが前提みたいなとこはありますもんね。

 

名取:はい、そうなんです。たまたま知り合った友人の中に無料で発音を教えている人もいたりして。

週1で通って発音の練習はしてましたね。もらった資料を一人で復習したりして。

 

セレン:発音をそうやってやてみて会話などに変化はありましたか?

 

名取:もうそれは全然違いましたね。手ごたえを感じた瞬間は何度もありました。

でも一番感じたのは、発音が向上すると相手の発話量が増えるんですよね。

これはすごい発見でした。

この人は喋れる人なんだな、という認識を向こうが持ってくれるとたくさん話す

ようになるんですよね。

 

逆でもそうですよね、きっと。

日本語がカタコトの人と話す時って僕らもその人に合わせて自然にしゃべっちゃう

というか、気を使って話しますよね。それがなくなっていった、というのは大きかったですね。

 

セレン:それすごいなあ。自分が変わることで一番変わることが相手である、

っていうのは何か禅問答っぽくて

深いですね。でも実際そうですもんね。その恩恵は大きい。

それってつまりこちらのインプットが増えるって意味でもありますよね。

 

発音が向上していく中で気づいた大事なポイントとかってありますか?

 

名取:LとRとかBとVとか、よく言われるやつもそうなんですが、一番根本に思ったのが

 

いかにカタカナを捨てられるか

 

ですね。

色々な場面を見たんですが、どれだけ先生が綺麗な発音で英語を教えていても

受け手がそれをカタカナで変換して聞いてると、一切音が近づいていかないんですよね。

 

それに気づいたときに飛躍的に伸びた気はしますね。視点がガラッと変わりましたね。

トロントにはいろんな人種の人がいたので、実際に話して慣れてくると英語が聞き取れる人と

聞き取れない人が出てくるんですよね。

それがよくよく聞いてみるとインド人のアクセントがあったり、

中東系のアクセント、フランス系のアクセントだったりして。

 

それは現地で体験してすごく面白かった体験ですね。

 

 

セレン:よく言われる「ミュージシャンは耳がいいから英語が聞き取れる」

っていうことに関してどう思いますか?

 

名取:僕もそれは誰か答えを教えてくれって思ってたんですよね(笑)

でも英語を話しているときに発音をほめてもらったり、日本人だと思わなかったと言われるように

なった背景には、発音の習得を歌を歌うプロセスと同じように捉えていたというのはあるかもしれません。

 

実際の音と自分の発する音がどのくらい近いかを比べる意識だったり、

それって僕らはレコーディングという作業の中で自然にやることじゃないですか。

例えば細かいピッチ(音程)を聞き直す作業だったり。

 

後は思ってたのはモノマネがうまい人って別に音楽とかやってなくても英語が上手に

なるような気がしますね。

 

セレン:それは僕もずっと言ってるんですが、本当にそうですよね。

 

名取:再現性ですよね、つまり。

 

セレン:そうなんです、再現性って突き詰めれば「注意する意識」のレベルなんですよね。

無頓着なのか、そこが意識できてる、の差ですよね。

 

でもモノマネのうまい人って才能ですよね。ある程度は誰でもできるけど、

見た人を感心させたり、似すぎてて笑えるっていう次元に持っていける人は限られてますよね。

 

ただそういう高次元のレベルではなく、ミュージシャンの中に英語の習得をしている人が多い

のって結局は音に対する意識、自分と対象の比較への意識ってとこなのかなあって。

 

で、それってつまり誰でも意識すれば向上する部分だよなあとは思うんですよね。

 

名取:同感ですね。おそらくミュージシャン、特に歌い手がこれまでやってきたことというのが

発音をよくするアプローチに近いんですよね。そのバックグラウンドやメソッドが応用しやすい

というのはあるかもしれません。

 

自分が喋れない理由がわかった

 

セレン:単語とか文法とかってどうやって勉強したんですか?

 

名取:語彙を増やすことに関しては苦労しましたね。

あまり勉強らしい勉強というアプローチを取らなかったので、とにかく僕がやったのは

発話にフォーカスし、自分が言いそうだなというフレーズをピックアップして、それを

実際の場面で使うっていう方法ですね。

 

あと、自分が必要な語彙を探るというのは日記を書くのと、あとは独り言を通じて

自分が今何を言おうとしてるのか、何が言いたいのかを炙り出す、という方法でやってましたね。

 

そこで言えないこと、書けないことを習得語彙のヒントにしていましたね。

 

セレン:それって本当に理にかなった方法で、子供が言語を覚えていく流れに

近い感じがしますよね。自分の興味、関心、衝動をベースに語彙、表現を習得していくという。

 

名取:よくやってたのはパーティーに行く前とかに、今日会う人のこととか、

会場の雰囲気とかをイメージして行く途中で話題になりそうな事とかを先に

イメトレするんですよね。

でそこで文章を組んでみて一人でブツブツ声に出して言ってみるんですよね。

 

冬とかだとネックウォーマーとかで口元隠したりしながら(笑)

それを自分がネイティブスピーカーと同じくらいの速度で言えるまで

何度も何度も練習したりして。

 

で、会場に着いたら実際に使ってみたりするんですよね。

で、帰りはそのパーティーの中でうまく言えなかったフレーズを1つだけでも

いいから持ち帰るんです。あのときうまく言えなかったなあ、

とかなんて言ったらよかったんだろう、ていうフレーズを。

 

で、それを思い出して帰りの電車とかで言うんです。一駅手前で降りて、

歩きながらこれもまた一定の速度で言えるようになるために練習したりして。

 

セレン:僕もまったく同じことをしていて、驚きました。僕なんかは今もやってますが、

基本ってどの国にいても同じなんだなあと、なんだかすごく驚きました。

 

第二言語習得論的にもよく頭の中でのシミュレーション(リハーサル効果)というような

言い方をしてアウトプットに効果がある方法としてよくあげられるんですが、

アウトプットの重要性をバックグラウンドにリハーサルをし、

そこに流暢性を高めるトレーニングも含めるって効果的なやり方なんですよね。

 

一人リハーサルと一人反省会、大事ですよね(笑)

 

名取:はい(笑)

 

僕の場合は日記を書いたり、語彙を覚えたりしてたんですが、

まだアウトプットがスムーズになる感覚がなくて、なにが足りないんだろうって

考えたときにアウトプットしかない、って思ったんです。

 

だから喋れないのか、と。

だって喋ってないんだもん。

 

それで独り言練習に行きついたんですよね。

 

セレン:僕なんかはずっと日本にいるので海外にいる人と比べたらまだまだきっと

アウトプットの機会が少ないだろうと思っていつもそういうことを気にしてやるんですが、

海外にいてもアウトプット不足は感じてたんですか?

 

名取:まだ現地のコミュニティーなどに参加できていない時期なんかは

海外にいても感じてましたね。

でも結果として英語を使う環境になってくるにつれて、

そういうことをするのを忘れるようになってましたね。

 

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