ミュージシャンが5年のカナダ在住で英語を身につけた方法とは?アーティスト【名取伸悟】インタビュー カテゴリ: インタビュー


 

「とりあえず海外に行く」は英語が上達するのか?

 

セレン:海外にいても全然英語が上達しない人って名取君自身も沢山見てきたと思うんですね。

 

名取:はい。

 

セレン:その反面、こうして英語力を身につけた人もいると。

でも、そういう人って日本に戻ってきたりすると

「そりゃ海外にいたら英語できるようになって当たり前だよね」って言われ方すると思うんです。

 

今後、実際に言われていくことになると思うんですが、それってどう思います?

 

名取:そうですね、すでに何回か言われてます(笑)

カチンとくる、とは言わないですけどね…

 

僕がトロントで出会った日本人や留学生の人たちの殆どが言うのがまずは

1年で英語しゃべれるようになんかなるわけないよね、ってことなんです。

 

それに早い段階で気づく人は2週間くらいで気づくんです。

僕なんかはのんびりしてたので半年くらいしてから

あれ、1年じゃ全然足りなくない?って思うようになったんですよね。

 

結局気づいてから、どういうアクションを起こすか、だと思います。

気づいたとしても日本人ばかりのコミュニティーにいる人は2年、3年経っても

英語が上達しないままというケースは多い印象ですね。

 

僕の主観なんですが、学び出しの3年間が大事だなと思います。

あくまで個人的な体感ですが、その3年間で身につけたことから飛躍的に

伸びるってことはそんなにないと思ってて、逆にその3年で伸びなかったら

根が尽きる、というかよっぽどの人でない限り、よし4年目から気合入れて

もっとやろう、とは思えないはずなんですよね。

 

そういう意味で長期的に海外に滞在してても伸びない人っていうのは

その最初の3年くらいの期間でしっかり伸ばし切れずに、そのまま5年、10年

という期間が過ぎてるだけという感じなんじゃないかなあと。

 

生活はできてしまう反面、勉強する機会、意欲はどんどんなくなっていくので。

 

1年くらいの海外在住ではなんともならない

 

セレン:これから海外に住む、留学するって人の中にはとりあえず行けばなんとかなると思ってる人

が沢山いると思います。それってなんとかなりますかね?

 

名取:まず1年でなんとかならないってことは、過半数以上の人には当てはまると思います。

1年で何とかなった人もいるにはいましたが、大多数の人にとって難しい話だと思います。

 

かなりのバックボーンがあったり、過去に留学経験があったり、

海外で一切の日本語環境を断ったりとなんとかなる人にはそれなりの裏付けがあると思います。

 

まずは海外に行く前に国内でできることをどれだけ準備できるか、

は大事だと思いますね。

 

1年間留学するってなると、7か月、8か月と経つにつれ、その人たちが帰国したときの

他者からの期待値も高くなっていく、ということに気付くと思うんですね。

 

1年もいたら英語くらいもう喋れんでしょ?的なことは必ず言われると思うんです。

 

そうなると焦るんですが、最後の数か月で焦ったところであまり変われなくて、

結局のところ前段階としてどんな準備ができているか、が大事になってくるんだと思います。

 

2年半経って感じたブレイクスルーとは?

 

セレン:今振り返って名取君自身がもっとこんなことをしておけばよかった、ってことはありますか?

 

名取:駅前の英会話教室に行って自分をやった気にさせる程度の勉強をするんだったら、

もっとオンライン英会話とかみたいに日常的に英語を話せる空間を作ってあげることが

大事だったのかなあって。

 

日本国内で英語を話したい人のコミュニティーを見つけられたらいいですよね。

一緒に頑張れる仲間とかいたら最高ですよね。

 

カナダに行って思ったのは目に入るもの、耳に入るものすべてが勉強になったんですよね。

カフェにいようが本屋にいようが、誰かの会話、街角の看板すべてが英語で勉強の

リソースになっていくんですよね。

英語ができるようになって英語が好きになった人にはたまらない環境ですよね。

 

セレン:ご自身の英語の成長でブレイクスルーとかまたそのきっかけとかって覚えていますか?

 

名取:2年半くらいたったときにようやく英語を話すことに慣れてきたかなっていう感覚はありました。

その少し前にネイティブの人たちとご飯を食べながら話していた時に、自分の好きな音楽の話で

盛り上がることができたんです。自分はこういうのが好きだ、なぜなら~だからだ、というような

意見をしっかり言えることができて、かつ相手の言っていることもある程度聞けて、その時に

 

「俺がしたかったのはこれだな」って感じたのは覚えていますね。

 

 

セレン:語学でしか得れない体験、感覚ってあってまさにその体験なんかがそうですよね。

 

名取:そういう感覚を得てから、体調や状況に左右されたりするときもあるんですが

パフォーマンスが一定してこの位は大丈夫かなっていうレベルに達することができたのが

今考えると2年半くらいだったかなあと。

 

セレン:名取君の場合、トータルでいうとカナダに5年いたんですよね?

2年半から5年まで住んでみて、今の感覚的にはどうなんですか?

 

名取:僕と英語の関係性に関していうと、以前よりは良好な感じがしています。

留学生が良く言われることに、日本に帰ったら英語なんかすぐ忘れちゃうよ

っていうのがあると思うんですが、今は染み付いた感覚があるので、そんなに簡単には

抜けてしまわないのかなって感じはしてます。いつでもスイッチを切り替えられるというか。

 

もちろん使わないと使える語彙は減ったりするでしょうけどね。

それってでも日本語でもそうで、日本語を使わなかった時期は日本語の語彙が

減りましたから。

 

セレン:それに関していうと日本に帰ってから英語力のキープのために気を付けて

いることとかってありますか?

 

名取:独り言ですかね(笑)

いまでもブツブツいってますよ。

口に出してますね、意識的に。

 

もちろん英語を使える場やコミュニティーを探したりっていうのも今はしています。

簡単な事でも、簡単なことだからこそ英語にして口にしてみるとかも大事ですよね。

それこそ数字を数えるとか、日常の中での些細なことを英語にする脳を寝かさずに

アクティベートしておくというか。

 

楽しくなるのはいつだってちょっと上達してから

 

セレン:性格は真面目なほうですか?

 

名取:なんですかいきなり(笑)

 

セレン:真面目か不真面目かで言うとどっちだと思います?

 

名取:うーん、真面目かなあ?

 

セレン:なんでかっていうと、僕自身いろんな英語に取り組む人に出会ってきて思うのは

性格ってなんだかんだすごく大事な要素だなあって。

真摯に取り組み、打ち込める土台があるかどうかって大事だと思うんです。

 

コツコツ同じこと続けるとか、準備したりレビューしたり、うまくなる練習したり、

こういうのって簡単そうで意外と難しいんですよね。

 

名取:真面目で、かつ尽くすタイプでないとってのはあるかもしれませんよね。

僕らも不真面目な要素って沢山持っていて、逆にそれがないと頭でっかちに

なりすぎたりして足かせになることもあると思うんですよね。

 

だからこそ、カジュアルさというか、不真面目さというかそのバランスが大事だと思うんですが

結局常に英語を思い続ける姿勢というか、そういうのも大事なのかなあって。

 

セレン:真面目な不真面目さとか、不真面目な真面目さ、みたいなのが大事なんですよね。

 

名取:ほんとそうですよね。楽しくないと続くないって思うんです。

でも、楽しく感じられるようになるのってちょっと上手になってからなんですよね。

 

発音や日記ってしっかり続けていれば必ず成長するもんだと思うんです。

楽しくなるためには上達しよう、上達するためには練習しよう、練習するためには準備しよう、

みたいなそういう視点が大事なのかなって。

 

で、また成長できてなかったら成長できてないのってなんでだろうって考えることも大事だし。

そこまで細かくなくてもいいと思うのである程度そういう漠然とした見方は大事だなあって。

 

外国かぶれだっていいじゃん

 

セレン:名取くんの英語学習を振り返って、結局これが楽しいから続けられたってことは

なにかありますか?

 

名取:そうですねえ、音読なんかは自然とやりたくなるというか、自分の英語の理想をいつも

確認するがごとく、話した時にちゃんと英語になってるか、流暢であるかっていう意識を

思って音読はしたりしてますね。

 

成長を常に楽しんでいる、という意識はありますね。

時には苦しくなる時もあるんですが、あまりそういう思いにばかり意識が行かないように

はしていますね。

 

セレン:今英語がある程度身についてこんなことができるようになった、

と実感できるのってどんなことがありますか?

 

名取:自分のライブでたとえばMCを英語でしたりとか、

その場のお客さんとのステージからの受け答えができるようになったりとか、

後はいろんな英語での打ち合わせがどんどんスムーズになっていったりとか。

 

後は英語の面白い歌詞で笑えるようになったりとか、ですかね。

 

 

 

ケンドリック・ラマーとかどれだけ汚い言葉使ってるかわかるようになったり。

 

 

しっかりとメッセージが取れるようになったりすると、

ああこういうのが分かるようになったんだなあという感じはしますね。

 

セレン:海外に行って、語学の留学目的だけじゃない状況の中で5年で

結果を出して帰ってくるってすごいことだと思うんですが、ご自身ではどう思いますか?

何があったからやり抜くことができた、とかってありますか?

 

名取:もっと知りたい、という好奇心とか知的欲求とか、そういうものがあったと思います。

音楽さえあればいいやって最初は思ってたんです。でも言葉がわかんないと現地の人たちと

深くつながれないんだなあって思って。

東京で出会うミュージシャンたちと深くつながるように英語を通した世界でもしっかり

繋がりたいと思ったんですよね。

カタコトの英語でイエスイエス言ってるのは違うなあって。

 

だからこそ、頑張れたっていうのはあるかもしれないですね。

 

結局一番カナダでの5年の暮らしで一番学んだのは「人」だったんだなあって思います。

価値観だったり人生観だったり、そういうものを一番吸収できたと思います。

 

何度も何度も脱皮させられましたね、自分の価値観の皮を。

僕は外国から帰ってきた人が「外国かぶれしやがって」って言われるのを見て、

 

「かぶれていいじゃん」

 

って思うんです。

僕自身かぶれてると思うし、かぶれたかったんだとも思うし。

 

逆にかぶれてなくてどうするのって思うんです。

そのかぶれた部分を日本で広めていったりすることで周りの人を変えたりしていけるんじゃ

ないかなあって思ってます。

 

セレン:かぶれるって要は皮膚で言うと「反応」ですよね。

異物に対する拒否反応も、治癒に向けての回復反応も、どちらにせよなにかしら、

これまで起こらなかったことがそこに起こっているっていうのはまずは

認識しないといけないですよね。

 

名取:その皮膚の例えでいうとカナダに行った時にまず皮膚がすごくかぶれていく感覚があったんです。

その皮膚がときには脱皮して全部剥けきってしまったり、また新しい皮膚が生まれてきたり、でも

自分のコアの部分は変わらないんですよね。遺物との衝突で一番外側の部分が変化をする。

 

それってとても前向きなエネルギーの交換なんじゃないかなって思うんですよね。

 

セレン:今日本に戻ってきて振り返る5年間のカナダ生活、行ってよかったと思いますか?

 

名取:はい、思います。

人間としてどこか呪術が解けたような感覚があります。

 

日本にいたときのように、こういう考え方をしないといけないわけじゃないんだなっていうのを

感じることができたんです。

そういう新しい価値観によって救われた部分がすごく大きいんです。

 

新しいことを吸収したいなら海外に行った方が絶対にいい

セレン:今後海外に出たい人、出たいけど迷っている人に今の名取君からは

どんなアドバイスをしてあげたいですか?

 

名取:躊躇する理由は様々だとは思うので一概には言えませんが

新しいことを吸収する気持ちがあるのであれば絶対に行った方がいいと思います。

 

向こうに行ってから日本の方がいいじゃんって言っている人にも会ったことが

あるんですが、それは僕は準備ができてないんじゃないかなって思うんです。

 

新しい価値観を受け入れる姿勢がないんだったら、お金の無駄遣いになって

しまう可能性はあるかもしれません。

 

そういう意味では英語の準備も大事ですが、そういう新しい価値観への準備っていうのも

大事なのかもしれませんね、今思うと。

 

 

セレン:カナダで5年間過ごした日本人としての今の最大の武器ってなんだと思いますか?

 

名取:1つではなく2つ以上知っている、っていうことかなって。

言語においてもそうですし、国の文化でもそうですし。

 

1と2の違いは大きいと思います。

 

セレン:では最後に英語を頑張る人になにかメッセージをいただけますか?

今回話を伺っていて特に僕は海外にいる人にとってとても励みになるんじゃないかなあと思うんですが。

 

名取:一番大事なことは英語に興味を持つことかなって思います。

英語と人に興味をもって日々接することが鍵になってくるのかなと思います。

 

そうすると街中の看板や出会う人すべてが学ぶ対象になってくるんだと思います。

それができないと海外だと人と接することを止めてしまったりする人も少なくないと思うんです。

 

そうなるとまた面白いこととの出会いが減ってしまい、ここの人たちは面白くないとか

この国は自分に向いていないとかっていう方向に行ってしまうんですよね。

 

沢山人と触れること、そして人と触れ合うためには英語に興味を持つ、と。

これが一番大事だと思います。

 

勇気は少しいるかもしれません。

でもその勇気はその人はきっともう持ってるはずなんです。でなきゃ

その国にはいないはずなので。その国にまずは行ったこと、それが何よりの証明

じゃないかなって思うんです。

 

それを忘れないでほしいって思うんです。

その勇気があるから、自分を変えたいって思ったんでしょって。

 

セレン:勇気を出す、というより勇気を思い出す、そんなイメージですよね。

この度は素晴らしい話を沢山聞かせていただきまして、ありがとうございました!

 

名取:ありがとうございました!

 

 

名取君の話を聞いていて一番感じたのは、海外に住み確実に何かを手に入れた人

特有のオーラを持っている人だなあということでした。

 

とても感覚的なものだけど、それは名取君自身が「2つ以上を知っている強み」と自身を

形容していたところに集約されるのかなあと思いました。

 

日本を出て、外国で暮らすということ、英語を確かな形で身につけるという事、

日本では得られないものを得て帰国すること、

多くの人が望み、多くの人が成功できずに終わることを

彼はやり遂げたんだなあと感じました。

 

もちろん本人はまだまだ、というに決まっているけれど、

そんな名取君のストーリーに勇気をもらい、新しい一歩が踏み出せる人が

きっとどこかにいるかもしれない。

 

このインタビュー記事を作成しながら、僕はどこかそんな確信めいた

ものを感じていました。

 

勇気はすでに持っている。

僕自身、そう心に刻みながら新しい一歩を踏み出そうと思えた、

そんなインタビューでした。

 

名取君、本当に貴重なお話をありがとうございました!

 

 

Mellow Symphony (名取伸悟)プロフィール

山梨県出身。路上ライブ、コピーバンドなどを経て上京後、

自主アルバムのリリースをキッカケにソロユニット「Mellow Symphony(メロウシンフォニー)」

としての活動をはじめる。東京を拠点に弾き語りからバンド編成までライブ活動と音源制作を行い、

ひと癖ある歌声とメロディラインで自身の音源制作以外にも楽曲提供や

コンピレーションアルバムへの参加などを果たす。

2012年より更なる音楽的な発見を求めてカナダのトロントへ移住し、

現地でレコーディングやライブ活動を行う。

英語初心者としてカナダへ行き、語学学校へは行かずに英会話を独学で習得。

2017年に帰国し、現在は音楽活動以外に翻訳・通訳・海外から日本へ来る人々の

現地コーディネーターなども行っている。

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