第2回 「第二言語習得研究家/豊田典子さん」 カテゴリ: インタビュー


 

それでは、早期教育では一体何をすればいいのか?

 

まずは母語で考える力を養わなければいくら英語を身につけたところで

グローバル人材には育ちません。

あとは算数などで論理的思考を司る脳を鍛えていかないといけません。

 

後はもちろん学校生活の中で社会に順応するコミュニカティブな力を培う必要があります。

 

小さい頃から英語をやれば誰もがバイリンガルにできるというのは

社会言語学的に神話のような話です。

そしてこれは何も日本だけの話ではないんですよ。

 

イギリスでのフランス語などの外国語習得も同じような問題を抱えています。

 

 子供をバイリンガルに育てたいという多くの方の思いを紐解いていくと

「英語ができたほうがいいんじゃないか」「これからは英語が必要なのではないか」

といった曖昧なスタートを端緒にしているケースは少なくないと思います。

そういったスタートで子供の人生にどこまでのリスクを追わせるのか、

という話ですよね?

 

まさにそうです。

 

多くのデメリットがあるのは事実です。ただ、ここで難しくなるのが

逆に確実なメリットもある、という事なんです。

 

まずは当たり前ですが学習時間が長ければ長いほど、英語はできるようになる。

笑っちゃうくらい当たり前のことですが(笑)

 

統計学的に見ても何度実験してもこの結果は変わりません。

子供英語には明確なゴールがないんです。

 

いつまでにこれを終わらせないといけないというものは

子供英語には始めからありませんから。

 

 

子供へ英語を教える効果的な方法とは?

 

 子供への英語教授法としては単純な翻訳的トレーニングは避けること

 

フラッシュカードを使うにしても、

「りんごはApple」

のように日本語を読んで英語を言わせるなどは、

早期バイリンガル教育にはむしろマイナスになります。

 

後は沈黙期というのが必ず子供には訪れますので、

これは覚えておいて欲しいです。

 

インプットを続けた子供がピタッとアウトプットをやめてしまう時期が来るんです。

 

日本語(母語)でも沈黙期というのは起こるんですよ。

もともと生まれたときはリスニングのみ、

そして徐々に話すようになり、

一時的にあまり創造的な言語活動が見られなくなる時があります。

 

ですので、沈黙期を見誤って、「この子はできない」や「すぐに忘れてしまう」

という判断をしないことが大事です。

 

沈黙期の子供は自分でも「知らない」と言ったりしますから、

保護者も注意して見極めなければいけません。

 

忘れてもいいので、その時期にもインプットを続けてあげる事が大事になってきます。

 

「絵本読もっか」「DVD見ようね」と優しく声をかけて上げ、

楽に英語にふれさせてあげてください。無理強いをしないことも大切です。

 

 小さい頃に効果的な英語の学び方は意味と音を一致させるやり方です。

 

「訳」させるのではありませんのでご注意ください。

 

日本語で、「この箱は英語でなに?」

 

というやり方は逆効果です。

英語は英語で、日本語は日本語で考えるのがバイリンガルの自然なあり方です。

 

通訳とは違うものなのです。

フラッシュカードを使うやり方がよくないのは同じ原因です。

チャンクといって一つながりの言葉のフレーズで覚えさせるのが大事。

人間の自然な言語習得はチャンクで習得されていきます。

 

極端な話そこにある1つの「箱」はboxではありません。

 

a boxであり、

 

There’s  a box.や、I like the box. などという認知や感情と結びついたものが、

 

本当の言語です。

 

 セットで覚えさせるようにしないといけません。

 

また、親が自分で教えようとするとそのように、

 

「○○ちゃん、これを英語で言ってみなさい」

 

というように誤った方法で英語を学ばせてしまうケースが多いんです。

 

さきほど言ったように通訳と言語習得は別のスキルですので、日本語を英語に変換させる

訓練をさせるのはバイリンガル育成とは別、ということになります。

 

 

例えば好きなDVDを見せるなどで、

感情や認知に伴った自然な言語活動のほうがバイリンガル育成には効果的です。

 

絶対に訳させてはいけませんよ。

 

そしてよりハードルを低く設定してあげることも大事です。

 

どこかで子供はつまづき、英語を嫌い、受験に失敗し、人生が

狂ってしまう可能性さえある。

 

私自身あまりにも多くのそういった子供を見てきました。

 

バイリンガルにしたい親の思いもわかりますが、

やはりそこは今一度

子どもの最終的なゴールを考えて欲しいと思います。

 

 

 義務教育でない限り英語の早期教育とは親の選択の1つ。

 

 私の研究の出発点は、「セミリンガル(ダブル・リミテッド)」

という英語も日本語も両方とも十分に習得できないというケースでした。

 

多くのバイリンガルデータを取りながら、2言語のバランスの良い習得を研究しています。

 

このダブル・リミテッド状態というのは外から気づきにくく、

子どもの時に早めに気づいて、母語を確立させてあげる事が重要になります。

 

心の中で「どっちの言葉も中途半端」と悩んでいるバイリンガルは世界に少なくありません。

成人すると修正するチャンスがなかなか無いのです。

 

 無理にバイリンガルにしようとする必要はないんです。

 

まずは素晴らしいモノリンガルであること、

それプラス高いレベルのアディショナル言語、

という捉え方でいいと思います。

 

 

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